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映画『天才作家の妻 40年目の真実』主演女優グレン・クローズにインタビュー「私、70歳を過ぎているけど、まだ若いし好奇心も旺盛です」

ハリウッドの演技派女優グレン・クローズの最新作『天才作家の妻 40年目の真実』のクローズさんの演技が素晴らしいと評判です。キャリア30年以上の大ベテラン! サスペンス映画『危険な情事』では妻子ある男性をストーカーする狂気の女、ドラマ「ダメージ」での一筋縄ではいかない弁護士役など、すべての作品で名演技を見せる彼女が本作で挑むのは、ノーベル文学賞を受賞した作家の妻。複雑な感情を抱えるヒロインを名優はどう演じたのか。グレン・クローズさんに話を聞きました。

目次

物語

現代文学の巨匠ジョセフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)のもとに、ノーベル文学賞を受賞したという知らせが入りました。大変な名誉に喜びを隠せないジョセフ。その後、彼と妻のジョーン(グレン・クローズ)と息子(マックス・アイアンズ)は、授賞式に出席するためにスウェーデンのストックホルムへ。しかし、受賞に浮かれるジョセフにジョーンは少々うんざり気味……。

そんな彼女のもとに、ひとりの記者(クリスチャン・スレイター)が近づいてきました。 「あなたと結婚してから、キャッスルマン氏は傑作を世に送り出していますね。それまで二流の作家だったのに」。ジョーンは笑って記者を追い返しますが、彼女の中に過去から現在まで至るまでの“ある出来事”が沸き上がってきて……。

私もジョーンを同じことをする可能性はあるわ

ジョーンは献身的に夫のジョセフを支えていますね。公私ともに支え、ジョセフは彼女がいなかったら、ノーベル賞を受賞できたかどうかわかりません。その裏のさまざまな出来事が映画で描かれていますが、クローズさんがジョーンの立場だったら、どうしますか?

グレン・クローズ(以下、クローズ)
ジョーンが若かった頃は、女性が作家として認められるのは難しかった時代です。だから彼女はあのような選択しかできなかった。でも、同じ立場だったら、私も本能的にジョーンと同じことをするかもしれないという気持ちはあります。

それは表現者として、そうせざるをえないということですか?

クローズ
そうですね。ジョーンは夫を通してずっと小説に関わってきましたが、私も長い時間をかけて演技することを学んできました。それは、自分をちゃんと持ちたい、自分とは誰かを知りたい、自分を幸せにしてくれるものを追求したいという欲でもあるのです。ジョーンも同じではないかしら。

だから彼女に対して「あなたのしていることは違う」と言い切れない。「自分が情熱を傾けていること表現したい。自分の才能を発揮したい」と思っている若きジョーンの気持ちはわかるし、同じことをする可能性はあると思います。

私は若いと感じているし、
好奇心もいっぱいです

クローズさんは、実力派の女優としてずっと変わらぬ活躍をされていますが、仕事への取り組み方は新人の頃と今とでは違いがありますか?

クローズ
あまり変わらないと思います。私はとても恵まれていて、昔も今も変わらず演技をすることに魅了されています。もしかしたら、今のほうが、若い頃よりもっと演技への情熱が深まっているかもしれないわ。

「演技をする」というのは、独特な表現を模索する作業。脚本を読んで、演じる人間はどういう人物なのかと、そのキャラクターを模索していくことが、私は本当に大好きなのです。想像力も必要だし、自分の周囲の人々を観察する力も必要で、それらの力を合わせてキャラクターを作り上げていくのです。

良い役者はどんなキャラクターであろうと、例え悪役でも、役の人間性を見出せば共感できるし、役を愛することができます。私は役に対して寛容でありたい、そして誠実に演じていきたい。それが役者にとっての挑戦だと思います。

私は新人ではないけれど、今でも自分のことを若いと感じているし、好奇心でいっぱいです。この先、どんな役を演じていくかしらと楽しみでしょうがないわ。ただ残念なのは、70歳過ぎた今、その楽しみが今後20年も続かないかもしれないってことね(笑)。

仕事の選択は「主観的」。
見極めることが大切です

あなたと同世代の日本の女性は専業主婦として人生を歩んできた人が多いです。きっと今でも第一線で活躍しているあなたをまぶしく見ていると思いますが、トップを走り続けられる秘訣、ワーキングマザーとしての喜びなどあれば教えてください。

クローズ
秘訣というのは特にないのです。仕事を頑張ってきた、突っ走ってきたというより、自然にここまで来たという感じです。私の仕事の選択は実に主観的です。良い脚本であるかどうか、スタッフ、共演者は一緒に仕事したい人であるかどうか……。 それらを自分自身でちゃんと見極めて決めれば、映画やドラマ作りはとても幸福なものになります。

ワーキングマザーとしては、子供の結婚が最近でいちばんうれしいことでした。長年お付き合いしてきた素敵な男性と結婚したのです。彼女が育った家で、みんなでお祝いをしたんですよ。これから人生の次のステージを生きる彼女を見るのが楽しみ。母としてこれほどうれしいことはありませんね。

今後の人生をどのように歩んでいこうと考えていますか?

クローズ
私は、年を重ねてきて気づいたことがあります。それは、あまり社交的な人間じゃないということ。でもそれでいいと思っているんです。大切なのは、自分が不幸になるようなことは回避することだと思っているので。この年になってやっとわかりました(笑)。ただ、残念なのは、良いパートナーシップが築けてないことかしら(クローズさんは離婚経験者)。

人は基本的にパートナーを求めるものだと思うのです。もし、自分の人生や経験というものを分かち合える相手が見つけられたら、それは幸運で居心地がいいことだと思う。一緒に歴史を作ってくれる誰かの存在は、人生において素晴らしい贈り物ですね。でもまだ巡り会えていないわ。若い頃は結婚観がとてもシニカルだったけれど、今はそうでも無くなってきたんですどね(笑)。

夫婦の間の秘密に苦しむジョーンを熱演し、世界中で絶賛されたクローズさん。でもそれは「認められたい」と野心的に歩んできたわけではなく、常に自分を見つめて、自分の演技を追求してきた真摯な姿勢が実ったのです。ベテランの域に入っても、好奇心旺盛で「まだまだ若いわ」というクローズさんにあやかりたいです。

グレン・クローズ(Glenn Close)
1947年生まれ。『ガープの世界』(1982)で映画デビューし、アカデミー賞助演女優賞候補に。『再会の時』(1983)『ナチュラル』(1984)と3年連続候補になり、演技派女優としての地位を確立。『天才作家の妻 40年目の真実』での名演でゴールデン・グローブ賞主演女優賞受賞。アカデミー賞候補最有力とも言われています。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』

映画『天才作家の』ポスター

公開日
2019年1月26日(土)より、新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

スタッフ・キャスト
監督:ビョルン・ルンゲ
出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター、マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク

© META FILM LONDON LIMITED 2017

構成・文=斎藤 香
写真提供=© META FILM LONDON LIMITED 2017

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