知っていますか? 生活福祉資金貸付制度
低所得の高齢者世帯を対象とした不動産担保型生活資金
経済的に苦しい人に無利子もしくは低金利で貸し付けを行う生活福祉資金貸付制度をご存じでしょうか?生活困窮者を救済する制度の一つとして生活保護がよく知られていますが、この生活福祉資金貸付制度は生活保護まではいかなくても、生活に必要なお金を金融機関から借りることができない人を対象に、国が公的融資を行う制度です。
貸し付けの対象となるのは低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯で、管轄は厚生労働省、実施窓口は都道府県の社会福祉協議会となっています。
生活福祉資金は大きく分けて総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類がありますが、大学入学などの進学に必要な経費を貸し付けする教育支援資金、賃金の未払いや遅配等の原因により、一時的に著しい生活困窮に陥った人に貸し付けを行う小口生活資金といったように、用途や目的別に細かく9種類に分かれています。
これらのなかで低所得の高齢者世帯を対象としているのが不動産担保型生活資金です。現在住んでいる不動産物件(土地、建物)を担保に生活資金を借りることができるという内容で、要保護の高齢者世帯向けには「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」という制度も用意されています。
ここでいう「高齢者世帯」とは構成員が原則として65歳以上の世帯を指します。単身、夫婦どちらであっても利用することができるうえ、借り入れ申込者か配偶者の親と同居している場合も利用することができますが、子供と同居している場合は対象外となります。
担保にできる不動産は土地の評価額が概ね1,500万円以上で、実際に現在住んでおり、かつ将来に亘っても住み続ける意思がある自己所有の一戸建て住宅とされているので、現在住んでいない家やマンション等の集合住宅、子供と共有名義の二世帯住宅は対象外です。
貸し付け限度額は土地評価額の70%程度ですが、この限度額以内であれば毎月希望の金額が借りられるというわけではなく、月々の貸付金は30万円以内と定められています。貸付金の利率は年3%、または長期プライムレートのいずれか低い利率とされています。
総合支援資金、福祉資金、教育支援資金の3つは無利子で借りることが可能なうえに、利息がつく場合でも1.5%と低金利であるため、それと比較するとこの不動産担保型生活資金は優遇されていないように見えますが、実際の長期プライムレートは3%よりも低い場合が多く、他の生活福祉資金とそれほど差はないようです。
申し込む際はリスクも考慮に入れ、慎重に検討を
申し込みは、現在住んでいる区市町村社会福祉協議会に相談するところから始まります。貸し付け要件や固定資産評価額などの事前審査を経て、申し込み可能となったら、正式に契約を締結し担保となる不動産の根抵当権設定登記を行います。
事前審査には資料として不動産の登記簿謄本や世帯全員の区市町村民税非課税証明書、申し込みには世帯全員の住民票の写し等が必要となるので、これらを用意する必要があります。さらに、担保措置として推定相続人のなかから連帯保証人を1名立てる必要もあります。
契約が締結され登記が完了した後は、3カ月ごとに3カ月分の貸付金が指定した口座に送金されるようになりますが、申し込みから貸付金交付まで最短でも6カ月かかるので注意が必要です。この契約は、借受人が死亡した時、または借受人か社会福祉協議会が解約をした時に終了となります。
契約が終了すると、償還期限(返済期限)である3カ月以内に担保である不動産を売却するなどして、これまで貸し付けを受けた元金と利子を一括で返済しなければなりません。この3カ月を過ぎると償還が完了するまでの間、延滞利子(年5%)が発生することになります。
ここで気になるのが、例えば借受人である夫が死亡した場合、同居していた妻はその家に住むことができなくなるのかという点ですが、借受人が死亡したとしても貸し付け元利金が貸し付け限度額に達していない等の一定の要件を満たす場合は妻が契約を継承することで住み続けることが可能です。
では、貸し付け限度額に達した後に借受人である夫が死亡した場合はどうかというと、原則として契約は終了となるので、妻がその家に住み続けることができるかどうかは審査の結果に委ねられることになります。
借受人は死亡していないけれども貸し付け限度額に達したという場合は、貸し付けは停止されますが契約自体は終了とはならないので、妻はそのまま住み続けることが可能です。ただし、限度額到達以降も貸付利子はそのまま発生し続けます。
このように、不動産担保型生活資金は我が家に住む低所得の高齢者世帯にとっては、生活資金を低金利で貸し付けしてくれる非常に便利な制度ではありますがリスクもあります。
大切な自宅を担保にしなければならないので、申し込みをする場合は事前によく考えると同時に家族とも十分に相談したうえで行うべきでしょう。
最新更新日 2018.02.13