働く高齢者が増えている! 今考えたい超高齢化社会
世界に名だたる長寿の国、日本
2015年、日本はある大きな節目を迎えました。いわゆる「団塊の世代」が65歳を超え、高齢者人口が約3,400万人に達したのです。総人口に占めるシニアの割合はこの時点でおよそ26%、国民の4人に1人が高齢者という時代が訪れたのです。
日本が世界一の長寿大国となった要因としては、食事や衛生管理を通じて健康に留意する人が多い国民性と、人種的・遺伝的特徴、国民皆保険制度の恩恵などが挙げられます。
それ自体は誇るべきことですが、少子化と相まってもたらされた超高齢化社会は、二重の意味で労働者不足の危険をはらんでいます。単に人口の1/4がすでに退職者であるということに加え、それを介護する人員をいかにして確保するかという問題です。
国の推し進める在宅介護の理念に従えば、核家族化の進んだ家庭内で要介護者のケアを担うことになりますが、それは先々、高齢者2人ないし1人のために家族の1人が就業を諦めるという、更なる事態の閉塞を招きかねません。そこで注目されているのが、労働意欲のあるシニアを充分に活用する雇用体制です。
広がるシニアワーカーの可能性
現在、730万人以上もの高齢者が実際に労働力として社会を支えていますが、それでも高齢者の20%強に過ぎず、労働意欲を持つ人口とのあいだに開きがあることは否めません。
内閣府の調査によると、収入を伴う仕事について「健康な限り続けていきたい」と希望する高齢者の割合は28.9%にのぼり、ある程度の年齢まで就労したいという回答と合算すれば、潜在的なシニアワーカーは実に70%以上に達するのです。
年金受給資格との兼ね合いもあり、シニアワーカーの多くがパートタイム・アルバイトでの短時間勤務に従事しています。時間も職種も現役世代とは違うかたちで彼らの能力が活用されれば、互いにパイを奪い合うことなく発展的に日本経済を活性化してゆくことが期待できます。
企業側もシニアワーカーの受け入れに積極的で、中でも2000年に設立されたその名も「高齢社」は登録社員650人の平均年齢68.9歳(2014年データ)、ワーク・ライフ・バランスを重視した先見的な経営戦略で人材派遣等を請け負い、順調に業績を伸ばしています。
関連リンク:最年長は83歳、平均年齢70歳のシニアが主戦力 株式会社高齢社 緒形憲社長インタビュー
高齢者がより活躍するために
働く側の都合に合わせたシフト制と、ワークシェアリングで1人当たりの負担を減らしつつより多くの希望者に働き口を確保すること、それが「高齢社」のビジネスモデルから読み解くシニア雇用のキーポイントです。
労働意欲を持つ高齢者とシニアワーカーの実数の乖離を埋めるため、学ぶべきところは多いでしょう。また、適度な労働は生活にハリを与え、経済不安だけでなく孤独感による不安をも和らげてくれます。
事実、早期退職者や社会との交流が少ない人と比べて仕事を続けている高齢者は健康寿命(=心身ともに自立して生活できる年数)が有意に長いという統計も出ています。シニア雇用は労働者不足の解消のみならず、先に挙げた介護問題を軽減することにもつながるといえるでしょう。
高齢者1人を現役世代2.3人で支えているのが福祉の現状ですが、ひるがえして、1人の高齢者の健康が2.3人の若者を助けると思えば、改めてその価値の高さが見えてくるはずです。
最新更新日 2018.03.30