年金受給者が働く際に注意すべき点はなに?
働いているのに損をする!?
老後の暮らしを支える年金が、税法上は雑所得扱いとなり所得税の対象となることをご存知ですか?年金は支給時にすでに源泉徴収がなされていますから、受給者となってからも特に意識していない人も珍しくありません。
しかし、条件によっては、勤め人時代には縁のなかった確定申告の手続きが必要になるのです。また、定年退職後も仕事を続ける人の割合は年々増加していますが、働き方によってはせっかくの年金が減額され、思わぬ不利益を被ることがあります。いざというとき焦らないよう、それぞれのケースを紹介していきます。
確定申告不要制度と免除規定
年金の確定申告が義務付けられるのは、公的年金等の収入が年400万円を超える人と、公的年金等以外の所得が年20万円を超える人、この2つのパターンに分かれます。
まず前者の注意点は、「年金は3階建て構造」といわれているように、国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金、企業年金や恩給など、複数の年金制度に基づく収入がある場合に、すべてを合算して400万円に達するか否か把握しておく必要があります。
とはいえ、平成27年度のデータでは、国民年金の満額は年間で約78万円、一般的なサラリーマンを想定した厚生年金は約120万円と試算されています。
つまり、受給者の大多数は400万円上限に抵触する心配はありませんから、年金のみで生活する高齢者のほとんどは確定申告の手続きはいりません。2012年につくられた「年金所得者の確定申告不要制度」によるものです。
一方、生活の助けとなるようアルバイトなど仕事をしている人の得た収入は、給与所得、または雑所得とみなされ、年間20万円に届いたら確定申告が求められます。月額1万7,000円弱の収入で該当してしまううえ、株式など投資で得た所得や家賃収入に類する不動産所得も対象となります。
このため、2月から3月半ばにかけての確定申告シーズンの税務署にはシニア層の姿も多く見受けられます。インターネットを利用すれば必要書類をダウンロードすることも、提出まで自宅で終わらせることも可能ですが、手続き内容に不明点があるなら早いうちに地元の税務署窓口に足を運ぶのがおすすめです。
支給停止・減額を避けるには
もう一点おさえておきたいのが、在職老齢年金制度による厚生年金の支給停止に関する規定です。年金の月額と年金以外の報酬の月額合計が28万円を超えたとき、額面に応じて厚生年金の一部が支給されなくなり、結果減額となってしまうのです。
あるいは、給与額に関わらず、労働時間が長時間に及び厚生年金の被保険者となったときも、支給停止の対象となります。目先の収入が増えても、損をすることになるかも知れません。本格的な再就職を考える際、絶対に見過ごせないポイントといえるでしょう。
メリット・デメリットを見極めて
年金だけでは暮らし向きに不安を覚える人、生活にメリハリをつけるため勤めに出たい人など、シニアの働く理由はさまざまです。年金減額や手続きの煩雑さを思うと及び腰にもなりますが、収入と労働時間の見通しを立てて仕事量を決めることでどちらも回避が可能です。
また、確定申告に関しては、医療費控除や社会保険料控除などの還付金を得るときにも必要ですから、事務処理の流れを知っておくと先々役に立つこともあるでしょう。いずれにせよ、自分のライフスタイルにあった働き方を見つけることが何よりも重要です。
最新更新日 2018.03.30